一柳慧ステレオテストレコードに見る池田亮司的エレクトロニカ


こんな7インチが存在します。音響構成を一柳が担当。A面は周波数特性や位相チェックなど一連のテスト。B面にはなんと一柳参加の楽曲が収録。これは総合テストのためだそうで。プリペアドピアノと尺八による演奏です。

この7インチを初めて聴いた時、どこか既聴感を覚えたのですが、それは池田亮司氏の「1000fragments」というCD作品のテイストに非常に共通する空気を持っているからでした。

テストレコードですから「左右のチャンネル確認と音量バランス」というナレーションのあと、効果音が入る、そういうテストを淡々と続けていくわけですが、この7インチ、その使用されている音自体がやばくて、ミュージックコンクレートが左右に飛ぶわ、ノイズのような割れんばかりの歓声や、スイープして低域に落ちていくサイン波に宇宙モノのような交信音のようなマーキング音が乗ってたり。。とにかく通常のテストレコードとは全ての部分で違っています。途中、休止溝までありループするし。。この溝の前後でステレオカッティングとモノラルカッティングに分かれているため、送り溝がない、という理由での休止溝らしいですが、こういう要素全て含めて、これは90年代エレクトロニカの雛型だなあと感じました。

ナレーションを英語にして男女交互に起用し全体にテンポを上げればこれはもう池田亮司氏の作品と言えるでしょう。他にもカーステンニコライあたりもかなり近いテイストのヒトで、ループ溝ばかりのレコードとかリリースしてます。
そういう見方をしていくと、ジャケットもなんだか似ていなくも無いないなあ、と感じてきますね。白黒の感じとかね。

この7インチ、ジャケットも本のような作りで、大変楽しめます。最後のページには、一柳の楽曲の絵画?版も掲載。かなりのアートモノです。

こういう解釈を出来る楽しみ、現代人の特権ですね。(マツオカ)